患者の信頼と咬合器
story of a Successful Dentist in Hollywood
健康とファッションの世界的激戦区、ハリウッドで長年に亘り歯科医院を経営された、とあるアメリカ人歯科医師の言葉が印象的でした。これは、その方と友人付き合いをされた著名な日本人の先生から伺ったお話です。
クリニックが次から次へと現れては去り行くハリウッドという街に在りなぜ現役を通すことができたか、それは患者さんとの信頼をもって他にはありませんでした。ではどのように信頼を作り上げ維持・継続・発展が出来たかといえば、患者さんに対してどれだけの想いを抱き具体的に行動を見て頂いたかに尽きます。これが先生のポリシーであり実を結んだ活動でした。
患者さんに見て頂ける先生の具体的行動に於いて、フェイスボウと咬合器の存在は非常に大きかったと言われます。患者さんはあくまで歯科治療には素人なので、我々にとっては常識的な石膏模型を見ることすら稀な体験です。それを、患者さん目線では非日常的で時間もかかり高度な医療と感じられるフェイスボウ採得を行い、メモリの付いた半調節性咬合器にマウントして見て頂く、これだけでも大きな信頼を得ることができたそうです。
確かに、治療ということだけを掻い摘めば、臨床家と患者さんは専門家と素人です。だからこそ“治療を見て頂く”ことが重要だったと先生は感じ取られ実践されました。その結果がハリウッドで生き抜くことが出来たこと、であったと言われます。
私はこの業界の人間なので咬合器にマウントされた自分の顎模型を見ても印象が違うと思いますが、例えば散髪店や美容室の一顧客目線では、一般的に2,000円のシャンプーを美容室が使うところ、3,000円のシャンプーを無言で使われても、美容師さんは満足でも私には伝わりにくいことです。どんなに顧客を想い身銭を切り、余計な労力を使ったところで、顧客満足度を得ることはできません。それを聞くこと、知ること、見ること、によって素人には始めて満足度を感じられるものになると感じます。これを具体的に地道に行動され、この先生は世界的激戦地で現役を全うされるまで活躍されたのだと感じさせられました。